とりとめのないはなし。

2020-01-01から1年間の記事一覧

私の人生 一話

「私は葛城亜美と申します。昨日お電話させて頂いたのですが、」「はい、お待ちしておりました。 左手にあるエレベーターに乗って5階まで上がってください。着きましたら、若い男性の案内に従ってください。」淡々と説明をしている女性は私と同い年ぐらいだ…

日傘の下の君の横顔が美しかった 完

絵を描いた。君の横顔が美しかったからだ。夏の終わりにはぴったりだ。背景には大きな入道雲と色鮮やかで濃い青。田んぼの一本道でこちらを向こうとする君。写真を見ているようだった。これこそが芸術なんだ。美しいものがある。美しいものを美しいと感じら…

日傘の下の君の横顔が美しかった 続き

その日は突然やってきた。天気予報では今夏の最高気温を更新するらしい。いつもどおり家には誰もいないので、一人きりで田舎の田んぼ道を歩いた。大きい入道雲がまるで亡霊船みたいな形でこっちに向かってくるのが見えた。田んぼに水がないことを不思議に思…

日傘の下の君の横顔が美しかった 続き

「人はいつ死ぬか分からないから出来るだけ綺麗な状態を保っていたいの。だから、私いつも日傘を差しているの。」彼女は言っていた。その時の僕には何を言っているのか、さっぱり分からなかった。命の儚さを当たり前かのように話す彼女の横顔を見ながら、暑…

日傘の下の君の横顔が美しかった 続き

全く治る気配がない頭痛を、保ちながら時刻は午前5時を回ろうとしていた。母が帰ってくるまであと4時間もある。このまま死ねたら楽だなぁと、過去を思い返しながら思った。子供の頃から頭痛に悩まされていたので、母は私を鬱陶しく思っていた。ただ、病院に…

日傘の下の君の横顔が美しかった

その日はひどい頭痛に苦しんだ。痛み方にもいろいろあると18年間の人生で学んだ。小学3年生の頃にズキズキした痛みに3日程苦しめられた。中学2年生の頃は一週間程、学校を休むはめになるほど強い頭痛に苦しんだ。ガンガンと言う感じの痛みだった。今回はその…

それからの話 完

手をぎゅっと握ったままのその子供は家についても一向に私の手を離してはくれなかった。家の表札には時平とあった。私の中学校の同級生と同じ苗字だった。近くの公園には桜の木が咲いていて、いよいよ四月が幕を開ける。そんな様な気分にさせる。私はその子…

それからの話 続き

少しずつその子供のことがわかってきた。名前は教えてくれなかったが。泣いていた理由も自分でわかっていないようだった。また過去に馳せる。私も理由もなくよく泣いていた。親は無視していたが、そのことが悲しかったわけではなかったと思う。ただ無性に悲…

それからの話 続き

その子供を泣き止ませようと、変顔、変顔、変顔、自分なりに様々なバリエーションを試した。まったく効果がない。どうにもならない事はどうにもしない、という考えが瞬間的に浮かんだ。しかし、自分が原因で起こったことに対して無関心でありたくない。つく…

それからの話 続き

ある日 道端で突然子供に話しかけられた。その子供は髪が伸びて、男の子か女の子かわからなかった。ねぇ、何してるの?どこに行くの?そんなことを聞いてきた。私は何もしてないよ。ただ家に帰るだけだよ。と答えたら、その子供は大きな声をあげながら、泣き…

それからの話 続き

結局中学の頃から何一つ変わっていない自分を戒めようと、生活に変化を加えてみた。小説を書くことにしたのはその頃で、昔から漫画はよく読んでいたし、学校の授業で活字に触れることは苦ではなかった。

それからの話 続き

中学生の頃に私は一度死んだ。人格もやっていたことも何もかも全て失った地獄のような時間の中で、私のことを好きだと言ってくれた人がいた。心から嬉しかった。本当に嬉しかった。しかし、過去が私を彼女から遠ざけようとさせた。今思うと、言い訳だったな…

それからの話 続き

二十年、今まで生きた。よく生きたと個人的に思う。まぁ、私の人生に対する評価など今更期待はしていない。ただ、マシな人生だったと思いながら死にたいだけだ。10年だけだ。あと10年だけ生きることにした。二十年で何も為せなかった人間にはきっと空虚な時…

それからの話 続き

春先の若干の肌寒さに身を震わせながら今日も魘されながら目を覚ました。いくらか理由は取り繕える。だがどれも適当ではないと思う。昨日食べた夕飯の残りで軽く食事を摂る。洗面台に向かうが水道が止まっていて、蛇口を捻っても水は出ない。2リットルのペッ…

それからの話 モノローグ

過去20年間で導き出した自己評価はあなたは生まれるべきでなかった人間、という結論に至った。原因を求めようにも生まれた時からこんな人間だから仕方がない。仕方がないからあと10年間だけ生きることにした。

日陰は薄暗い。小さな光があった。黒い眼の印象を受けて、どきっとした。多くの人が失うばかりな世の中であなたはそれを歓迎した。

狂いだした空模様に日が差し出して幾分か救われた。風は依然として激しいままだ。懐かしい冬の大三角を見ながら野宿でもしようか。君の言葉は今もわからない。日陰者の人間には辛い現実を乗り越える術がない。多くの人がそうしたように雲の切れ間から覗く太…

花時計

カールフォンリンネが考案した花時計に使われるおよそ200種類の花の種類を全て把握している人などほとんどいないだろう。人の性格は花に喩えられた。いつ咲くかもわからない花を待つ人間はいない。しかし、いつか咲く。花は咲くために生まれた、私はそう思う…

束髪

彼女はいつも同じ場所に髪を結ぶ。髪を結ぶと気合が入るらしい。同じ職場でしかも同期だ。それにも関わらず、私は彼女を尊敬している。少し偉そうだな、と初対面の印象はあまりよくなかった。彼女の雰囲気なのか、私が卑屈なのか、理由は今もわからない。し…

生きることを諦めるな

彼は明るい人間だった。いじめにだって屈しない。家族が死んでしまったって彼の背筋はピンと伸びたままだ。朝日が差して寒い空気が柔らかくなった。午前6時を目印に目が覚める毎日は疲労感の中にほんの少しの充実感があった。懐かしいなと彼との思い出を振り…

生きていくと決めたんだ

今週のお題「応援」生きていくと決めた。しかし、無力感、虚無感が心に重くまとわりついたまま、離れない。何でこんな人間に生まれてしまったのだろう生きてきたことを後悔した。あの日死ねば良かった。生まれてこなければ良かった。死にたい瞬間なんて何度…

評価

無理しないでいいよ。苦しいなら苦しいでいいんだよ。自分を肯定していいんだよ。諦めたくねぇだろ。後悔したくねぇだろ。生きていたいだろ。行間に埋めた言葉を綺麗に取り払って喉から出かけた言葉を呑み込む。自分の中で考えておかないと、言葉もろくに話…

隙を見せれば殺される。リラックスなんてできるものか。困難を悦ぶ人間など破綻する。命を弄ぶ人間など殺される。生きていればいいなんて誰も許さない。死ぬならはっきり死ねよ。誰も期待しないならさ。

草臥れた人生

年が明け、日々の寒さが嬉しくなった。冬は何と美しい季節なんだろう。キラキラした朝日が水平線上から顔を出して、澄んだ空気が肺に刺さる。なんて心地いいんだろう。疲れきった身体を癒してくれる。言葉と人生を共にすると決めてから日々の情景を言語化す…

波紋

ぽつり、と水溜りに水滴が落ちた。それから瞬く間に波紋が広がって、騒音と静寂の狭間の空間を生み出した。思えば、そんな人間だった。人の顔を気にして、つまらない人間だった。言動にいちいちビクビクしている臆病者だった。心がどんどん小さくなっていっ…

死期

死にたいなぁ、と詭弁をたれる。生きたいなぁ、と稚拙に語る。どちらをとっても人生における結末は変わらない。冬の空はとても澄んでいて、朝日が空気に舞っている埃を照らし、目を瞑らせる。アルバムは全て燃やした。生きていた軌跡を残すわけにはいかない…

定石

春に桜が咲いている。夏の海はとても美しかった。秋の紅葉は寂しい気持ちにさせる。冬の雪は心を暖めてくれる。友人との会話がかけがえのないものになった。失えば代わるものがない。家族との記憶に蓋をした。もう二度と悔しくて悲しくてもどかしい思いをし…

人格形成

子供の頃培ってきたものは大抵、意識的ではないと思う。親の性格や仕事などの自身では変えられない環境によって決まってくる。だからこそ平等なんてものはない、ありえない。したがって他者の価値観を否定することなんてできるわけがない。正しさと間違いを…

友人が死んだ。自殺だったらしい。私はその日、いつも通りに会社で働いていた。私は俗に言うブラック会社に勤めていた。残業は月100時間を超え、家に帰る日は月に一度あるか、ないかというほどだった。そんな日でも私はいつもどおりに働いていた。ほとんどそ…

普段の様子とは明らかに違っていた。彼女の笑顔がより一層愛おしかった。昔聴いた曲の歌詞を思い出す。言葉も出てこない私を笑って欲しい。途方もないほど文句を言って欲しい。貴女にはその価値があると思っていた。一瞬で過ぎていく毎日を、孤独に怯える毎…