とりとめのないはなし。

2024-01-01から1年間の記事一覧

rest 4

彼女は絵画を見て、「何が面白いの?」と言うような人だった。 何が面白いか分からないから面白いんだと、誰かが言っていた。 僕は教科書のページの隅にパラパラ漫画を描いていた級友に、一枚のイラストを依頼した。 彼は快く引き受けてくれたが、僕は違和感…

rest 3

桜の花びらをじっと見つめながら何かを話す彼女の映像を頭の中で見ていた。 「春になんでそんなふうに思うの?」 「君が思う春を僕は知らないけれど、僕はどんな季節であっても僕のままだと思うよ。」 彼女は桜の花びらから目を逸らさない。 「春ってねぇ、…

rest 2

「やれやれ。」 どこかの誰かがそう呟いて、 賛同する人もいて、反応しない人もいる。 登場人物たちに対して感謝を述べる人もいれば、自分が作ったものに興味を示さない人もいる。 愛された人間にしか愛される人間像が輪郭と中身を伴ったまま生み出せないの…

rest 1

時間軸を辿ってみれば今の僕がここにいることにほんの少しの違和感がある。 ほんの少しというのは、料理の調理工程にある 「塩を少々。」ぐらいのものなんだけれど。 彼女が僕の前に現れた、いや、僕らが出逢った時に僕らはお互いを認識するべき数々の出来事…

LE

春が始まる頃に来年の冬を見るために今年を生き抜こうと誓うことが彼女から教わった最後の言葉だ。 僕が彼女のおかげで生きてこられたのは言葉があったから。 伝えあって、心を探り合いながら日々を積み重ねてきたからだ。 秋の終わりに紅葉の葉で覆い尽くさ…

春を行くあなたへ。

深く思い出を刻み込んだ彼は前を向いて歩いていった。 彼が一歩ずつ、あるいは半歩ずつ、あるいは4分の一歩ずつ日々を過ごしてきたなかで、堆積していった感情はもはや僕には理解できないものだ。 僕が自転車に乗ってあの公園に行くと、彼は遅いぞ、と言う。…

悲哀

こんなに悲しいことはもうないと思っていた。 僕が生まれる前からその漫画は家の本棚にあった。 人生で初めて読んだ漫画がそれだった。 wowakaさんが亡くなったときも散々泣いた。 全然言葉なんか役に立たないんだ。本当に。 とても大きな感情に迫られたらど…

3月8日

一体何を書けるのか全く分からない。

空が消える

どれだけの悲しみが君を覆っているんだろう。 君にかけられた言葉の数々が堆積して出来た 巨大な壁を目の前にしているよ。 果てが見えないな。まるで世界を横断しているほど巨大だ。 僕は言葉の捉え方を間違え続けてきたんだろうな。 だからもう、どんな言葉…

あの丘

青い花が散っていって、彼はドアを開けて外に出た。 彼女は本を読むことをやめた。 僕は音楽を聴いている。 あのカーテンの色はパステルカラーで、本のカバーには押し花のデザイン。 誰もいなくなった部屋でパソコンのキーボードを打っていた。 彼女は「言葉…

隙間から話③

音楽を小説を生活の中心に置いておける時間を確保しておくことを目標にしておきながら、僕は文章を書くことができた。 誰かのために書ける文章には出会えない。 だが、その試みぐらいは許されていいだろう。 貴方のことを愛すよ。 僕は言葉で全てが語れると…

少し

あの空には雲がかかっていて、僕の目の前には電柱が立っている。 僕は数分前に自転車に乗っていた。 漕ぎ続けた道はなんて事のないただの道だった。 僕は下り坂を降りて行く途中で電柱にぶつかった。 深夜の住宅街だ。 何が起きたか分からなかったので、僕は…

non 2

こういう時に何を言うべきか、僕は知らない。 だから考え続けます。 しばらく旅行に出ているように文を書いていました。 新幹線、飛行機、船に乗るような旅行です。 当たり前の行動っていう言葉が最も抽象的で あやふやなものです。 今のこの社会のようにで…

non

貴方と約束した時間ぴったりに僕は到着した。 時計台の真下にベージュのコートを着ている貴方がいた。 「ごめん、待った?」僕が言った。 「ううん、全然。」貴方はそう言う。 ところで、この話を書いている途中に烏が鳴いていた。 僕の部屋にある本棚からは…