とりとめのないはなし。

2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧

吐露 18

老人は何も言わなくなった。 僕は「なんとか言ってくれよ!」と大声を出した。 声が響くトンネルの奥に老人は進んでいく。 黙って僕もついていく。 老人はあの世の入り口の前に立って、 「本気だな?」と言った。 「本気ですよ。死にたいと思っています。」 …

閑話休題

私に対して語ることはないけれど、 夕暮れが早まってきて、いよいよ夏が終わっていることを自覚しなければならないと思っています。 突然ですが、私は他人の幸せを願うために必要なこととして、距離感と自己愛を挙げたいです。 距離感にも様々な種類がありま…

吐露 17

「呆れたよ。本当に。優しさなんてなぁ、世の中にとって何の価値もないんだよ。いや、お前のそれは優しさでもなんでもない。ただ傲慢なだけだ。」 「世の中のことなんて知りませんよ。ただ、僕は彼の葬式をちゃんとやりたいだけです。彼がもう死んだってこと…

吐露 16

僕がトンネルについたころ、夕陽が沈み始めていた。 僕はトンネルの入り口で、トンネルの闇がいつもより深く感じた。 彼のことを思い返して、トンネルの中に入った。 暗いトンネルの中は、より一層不気味だった。 風が通る音と、自分の足音が反響する。 僕は…

吐露 15

彼について知ることは僕が思っていたよりずっと複雑な問題に直面したみたいだった。 僕が彼のために出来ることは彼の体を見つけて現世で弔うことだけだった。 そのためには死にたいと思わないといけなくなる。 「おばあちゃん、どうすれば死にたいって思える…

吐露 14

彼女は彼の家の場所を知らなかった。 彼は全く本当に友達がいないようだ。 僕はもう疲れ切って自宅に帰ることにした。 彼のことを学校になんて言えばいいんだろうと不安になった。 ご両親になんて言えばいいんだろう。 僕はその日うまく眠れなかった。 次の…

吐露 13

初めて見る彼女はとても色が白く、目が大きく、簡単に言えば美人だった。 部屋着っぽい服装の同級生を見るのは初めてだったから緊張をした。 というか、それは彼女も同じようだった。 お互い面識がないのに何故彼女は僕の声掛けに応えてくれたのか。 僕は公…

吐露 12

僕が華原江田に会うためにしたことは学校に掛け合うことでも、友達に連絡先を聞くことでもなかった。 前者は何だか馬鹿げているし、後者は僕に友達がいることに自信がなかった。 僕はひたすら自転車を漕いで学校に通えそうな通学までの距離の家々を片っ端か…

summer プロット

ミスターは彼女に逢えた。 彼女に逢えない可能性に対する恐怖や、彼女に伝えたいことのいくつかがあの世界から出る鍵だった。 錠はカラスだった。ミスターはトラになったカラスをカラスに戻すために時間を戻すことにした。 ある街の噴水に飛び込んで、水のベ…