とりとめのないはなし。

2023-10-01から1ヶ月間の記事一覧

彼女が映画を観ている時の横顔が好きだったけれど、泣いているところは見たことがなかった。 彼女と会ったのは通っていた喫茶店が定休日で、手持ちぶたさになった僕が入ったファミレスだった。 彼女は入店した僕に席を案内し、水の入ったコップを机に置いて…

泡沫

灯籠が空に浮かんでいる。 それを撮っている青年がいた。 青年は撮ってある写真を後日見せてくれた。 たまたま旅行で訪れて良かったと彼は言っていた。 「あんなに綺麗なもの、生まれて初めて見ました。」 彼が撮った写真の中には灯籠の写真だけでなく、真夜…

木立

木の枝の隙間から月が顔を見せていて、 下を向いて歩いたあなたのことを照らしている。 そんな光がこの夜を全て照らしてくれればいいと願っている。 僕の好きな人は笑うと目尻に皺がよる人だった。えくぼが可愛らしくて、会話の第一声が「どうしたの?」から…

長閑

彼女に会えた時に言う言葉を考えながら一週間を過ごしてきた。 シュミレーションをしておかないと僕は何にも話せなくなってしまう。 何にも話せないと彼女に気を遣わせてしまうことになることを避けたいんだ。 僕があんまりにも何も言わないもんだから彼女も…

このブログ

このブログにある下書きを見返してみると、一番古いもので2019年4月19日とある。 それ以前のものはあったような、なかったような、そんな感じ。 始めた頃は、ただ自分を救いたかっただけのような気がする。でも、当時は自覚してなかったんだと思う。 ただ、…

知らずに

彼は「もう僕のことは放っておいて欲しい」と言っていた。 そうは言っても構っていたいのが私の本心だった。 だから、一日のほんの数時間だけ一緒に何かをしようと提案した。 何かっていうのは、本を読んだり、絵を描いたり、勉強したり、ゲームをしたり、と…

広さ

本棚にはぎっしり本が入っていた。 本棚と言っても高さは二段で、幅は二m弱だった。 今はもう無くなってしまったが、本自体は別の棚に収納されている。 中身を入れるための外観性に富んだ入れ物は、 その形を保ったまま思い出になっていった。 子どもの頃抱…

気晴らし

「ねぇ、本でも読まない?」と言ってくれた彼女が僕の人生の幸福そのものだった。 大袈裟だ。今思えば大袈裟だと思う。 当時の僕には大袈裟なんかじゃないけどね。 「うん、読んでみる。」 彼女が勧めた本は、今でも人気の作家の本だった。 内容はよく分から…

無題

林の中を歩いていると、小さく盛り上がった土に花が一輪植えられていることに気づいた。 私は肩に下げたバッグに手を添えながら、その花の脇を通って歩いた。 林を抜けて左を見るととても高い壁がそびえ立っていた。右を見ると雑草が生えた獣道があった。 私…

吐露 21

僕は、意識が宙に浮きながら9月、10月、11月、12月を過ごしていた。 色々なイベント行事が学校内であったけれど、何一つ思い出にはならなかった。 僕は昼休みに図書館に通うようになった。 海外の作家はいないけれど、有名な日本人の作家の小説を読んだ。SF…

吐露 20

彼の体は、冷たくなっていた。 僕は何を言ったらいいか分からなかったし、 言葉が見つかることもなかった。 人の死に顔を初めて見た僕は、どんな顔をしていたんだろう? 夏の空は快晴のままでうるさいくらい蝉が鳴いていた。 想像できることに限界がある僕は…

吐露 19

黒い点はこっちに近づいて来るわけでも、 僕が近づいていくわけでもない。 僕は走り続ける。 全く何も変わらないなんて、酷いじゃないか。 僕は何でこんなに必死になっているのか、 分からなかった。 何故彼に執着しているのか。 僕は人と人の関係の浅さとか…

隙間から話 ①

隔週エッセイならぬ隔月エッセイみたいなことをしたくなっちゃいました。 てへっ。 9月は終わりましたね。 それにしても29日は月が綺麗でしたね。 見惚れてしまいました。 なんて言いたかったんですが、実は見れなかったんですよ。 寂しくなりますよ。本当に…