とりとめのないはなし。

2023-01-01から1年間の記事一覧

この空

僕が思っていたことを君も同じタイミングで話すから僕は言いたかったことをすっかり忘れてしまったんだ。 星が綺麗とか、風が強いとか、そんな様な話にどれだけの価値があったのか、今後の人生なんてものを吹き飛ばせるぐらいの価値だと思っていた。 君がド…

花が咲く前

君が思っている以上に、君がこの世界に及ぼしている影響は凄まじいものだと、僕は本気で思っている。 つまりね、夜空に浮かぶ星々の美しさとか 日が昇る愛おしさなんて比較対象になり得ないんだ。 そのぐらい君の価値は本当に尊いものなんだ。 僕は真面目に…

柔らかい春風が街を包んでいて、一日中、 日向ぼっこをしていた。 彼が買ってきたフランスパンを蓋付きのパンバスケットに詰めて、街で一番大きな公園のベンチに私は座っている。 昨晩彼が夜遅くに帰って来て、私が眠っている間に書き置きとフランスパンがリ…

気楽

それほど広くもないスペースに音楽をばら撒いてリズムやメロディを探すような話が聞こえてきて、僕は心が踊り始める。 少ない文字で書き始めても、誰にも伝わらないことが僕を遠い距離に置いていくためには必要なことだった。 伝えようとすることによって伝…

隙間から話 ②

二回目のエッセイです。 10月について思うことと、 前回に続いて人生について思うことを書こうと思います。 まず、10月ですね。 一年の中で大切な月ですね。 季節の変わり目というのは美しい瞬間や景色に遭遇出来るんですけど、個人的に体調が悪くなります。…

彼女が映画を観ている時の横顔が好きだったけれど、泣いているところは見たことがなかった。 彼女と会ったのは通っていた喫茶店が定休日で、手持ちぶたさになった僕が入ったファミレスだった。 彼女は入店した僕に席を案内し、水の入ったコップを机に置いて…

泡沫

灯籠が空に浮かんでいる。 それを撮っている青年がいた。 青年は撮ってある写真を後日見せてくれた。 たまたま旅行で訪れて良かったと彼は言っていた。 「あんなに綺麗なもの、生まれて初めて見ました。」 彼が撮った写真の中には灯籠の写真だけでなく、真夜…

木立

木の枝の隙間から月が顔を見せていて、 下を向いて歩いたあなたのことを照らしている。 そんな光がこの夜を全て照らしてくれればいいと願っている。 僕の好きな人は笑うと目尻に皺がよる人だった。えくぼが可愛らしくて、会話の第一声が「どうしたの?」から…

長閑

彼女に会えた時に言う言葉を考えながら一週間を過ごしてきた。 シュミレーションをしておかないと僕は何にも話せなくなってしまう。 何にも話せないと彼女に気を遣わせてしまうことになることを避けたいんだ。 僕があんまりにも何も言わないもんだから彼女も…

このブログ

このブログにある下書きを見返してみると、一番古いもので2019年4月19日とある。 それ以前のものはあったような、なかったような、そんな感じ。 始めた頃は、ただ自分を救いたかっただけのような気がする。でも、当時は自覚してなかったんだと思う。 ただ、…

知らずに

彼は「もう僕のことは放っておいて欲しい」と言っていた。 そうは言っても構っていたいのが私の本心だった。 だから、一日のほんの数時間だけ一緒に何かをしようと提案した。 何かっていうのは、本を読んだり、絵を描いたり、勉強したり、ゲームをしたり、と…

広さ

本棚にはぎっしり本が入っていた。 本棚と言っても高さは二段で、幅は二m弱だった。 今はもう無くなってしまったが、本自体は別の棚に収納されている。 中身を入れるための外観性に富んだ入れ物は、 その形を保ったまま思い出になっていった。 子どもの頃抱…

気晴らし

「ねぇ、本でも読まない?」と言ってくれた彼女が僕の人生の幸福そのものだった。 大袈裟だ。今思えば大袈裟だと思う。 当時の僕には大袈裟なんかじゃないけどね。 「うん、読んでみる。」 彼女が勧めた本は、今でも人気の作家の本だった。 内容はよく分から…

無題

林の中を歩いていると、小さく盛り上がった土に花が一輪植えられていることに気づいた。 私は肩に下げたバッグに手を添えながら、その花の脇を通って歩いた。 林を抜けて左を見るととても高い壁がそびえ立っていた。右を見ると雑草が生えた獣道があった。 私…

吐露 21

僕は、意識が宙に浮きながら9月、10月、11月、12月を過ごしていた。 色々なイベント行事が学校内であったけれど、何一つ思い出にはならなかった。 僕は昼休みに図書館に通うようになった。 海外の作家はいないけれど、有名な日本人の作家の小説を読んだ。SF…

吐露 20

彼の体は、冷たくなっていた。 僕は何を言ったらいいか分からなかったし、 言葉が見つかることもなかった。 人の死に顔を初めて見た僕は、どんな顔をしていたんだろう? 夏の空は快晴のままでうるさいくらい蝉が鳴いていた。 想像できることに限界がある僕は…

吐露 19

黒い点はこっちに近づいて来るわけでも、 僕が近づいていくわけでもない。 僕は走り続ける。 全く何も変わらないなんて、酷いじゃないか。 僕は何でこんなに必死になっているのか、 分からなかった。 何故彼に執着しているのか。 僕は人と人の関係の浅さとか…

隙間から話 ①

隔週エッセイならぬ隔月エッセイみたいなことをしたくなっちゃいました。 てへっ。 9月は終わりましたね。 それにしても29日は月が綺麗でしたね。 見惚れてしまいました。 なんて言いたかったんですが、実は見れなかったんですよ。 寂しくなりますよ。本当に…

吐露 18

老人は何も言わなくなった。 僕は「なんとか言ってくれよ!」と大声を出した。 声が響くトンネルの奥に老人は進んでいく。 黙って僕もついていく。 老人はあの世の入り口の前に立って、 「本気だな?」と言った。 「本気ですよ。死にたいと思っています。」 …

閑話休題

私に対して語ることはないけれど、 夕暮れが早まってきて、いよいよ夏が終わっていることを自覚しなければならないと思っています。 突然ですが、私は他人の幸せを願うために必要なこととして、距離感と自己愛を挙げたいです。 距離感にも様々な種類がありま…

吐露 17

「呆れたよ。本当に。優しさなんてなぁ、世の中にとって何の価値もないんだよ。いや、お前のそれは優しさでもなんでもない。ただ傲慢なだけだ。」 「世の中のことなんて知りませんよ。ただ、僕は彼の葬式をちゃんとやりたいだけです。彼がもう死んだってこと…

吐露 16

僕がトンネルについたころ、夕陽が沈み始めていた。 僕はトンネルの入り口で、トンネルの闇がいつもより深く感じた。 彼のことを思い返して、トンネルの中に入った。 暗いトンネルの中は、より一層不気味だった。 風が通る音と、自分の足音が反響する。 僕は…

吐露 15

彼について知ることは僕が思っていたよりずっと複雑な問題に直面したみたいだった。 僕が彼のために出来ることは彼の体を見つけて現世で弔うことだけだった。 そのためには死にたいと思わないといけなくなる。 「おばあちゃん、どうすれば死にたいって思える…

吐露 14

彼女は彼の家の場所を知らなかった。 彼は全く本当に友達がいないようだ。 僕はもう疲れ切って自宅に帰ることにした。 彼のことを学校になんて言えばいいんだろうと不安になった。 ご両親になんて言えばいいんだろう。 僕はその日うまく眠れなかった。 次の…

吐露 13

初めて見る彼女はとても色が白く、目が大きく、簡単に言えば美人だった。 部屋着っぽい服装の同級生を見るのは初めてだったから緊張をした。 というか、それは彼女も同じようだった。 お互い面識がないのに何故彼女は僕の声掛けに応えてくれたのか。 僕は公…

吐露 12

僕が華原江田に会うためにしたことは学校に掛け合うことでも、友達に連絡先を聞くことでもなかった。 前者は何だか馬鹿げているし、後者は僕に友達がいることに自信がなかった。 僕はひたすら自転車を漕いで学校に通えそうな通学までの距離の家々を片っ端か…

summer プロット

ミスターは彼女に逢えた。 彼女に逢えない可能性に対する恐怖や、彼女に伝えたいことのいくつかがあの世界から出る鍵だった。 錠はカラスだった。ミスターはトラになったカラスをカラスに戻すために時間を戻すことにした。 ある街の噴水に飛び込んで、水のベ…

吐露11

トンネルをしばらく進んで、側壁にあった絵が無くなっていたことに気づいた。 老人も見つけることは出来なかった。 僕はまたあのコンクリートの壁に出会い、そして入口に戻ることを夕暮れまで続けた。 僕は死にたいと思わなければあのトンネルがあの世に続く…

吐露10

僕はトンネルに向かう途中、彼のことを考えていた。 いじめだとか、夏休みの宿題だとか、僕は肝心な彼についてを何も知っていなかった。 トンネルに着いた僕は、中に石ころを投げ込んでみた。 遠くまで音が響いていた。 本当に出口があるのか。 僕はまたトン…

吐露9

穴の中は真っ暗で、何も見えなかった。 僕はしばらくして意識を失って、目が覚めると トンネルの入り口の前で横になっていた。 体を起こして周囲を見回した。 彼はいなかった。 蝉が鳴いていて、体に嫌な汗が滲んでいた。 夕日が沈んでいく。 僕は眺めること…