昨晩降った雨で出来た水溜りでこどもが遊んでいる。それをにこやかに見守るお婆さんと、無関心そうにスマホをいじるお母さん。空は晴れていて、最高気温は27℃らしい。とても過ごしやすい日だ。散歩をしている私はお気に入りの靴を履いていたので、気分がよか…

空が暗くなっていた。何もない地面を歩いている。いつの間にか夜になっていた。歩きながら道を探していた。風は全くない。空気は湿気も乾きもなかった。ただ爽快だった。訳もなく愉快だった。とても穏やかだった。遠くの方に光が見えた。地平線の一点だけを…

ある秋の晩、不規則な点滅をおこす街灯と微かな月明かりの下で道の真ん中を歩いている男がいた。名は加持と言う。口が上手く、達者であった。道に迷ったり、重い荷物を持った人に進んで声をかけるような人物だった。その行動の裏には疚しいところなどなかっ…