2023-08-01から1ヶ月間の記事一覧
トンネルをしばらく進んで、側壁にあった絵が無くなっていたことに気づいた。 老人も見つけることは出来なかった。 僕はまたあのコンクリートの壁に出会い、そして入口に戻ることを夕暮れまで続けた。 僕は死にたいと思わなければあのトンネルがあの世に続く…
僕はトンネルに向かう途中、彼のことを考えていた。 いじめだとか、夏休みの宿題だとか、僕は肝心な彼についてを何も知っていなかった。 トンネルに着いた僕は、中に石ころを投げ込んでみた。 遠くまで音が響いていた。 本当に出口があるのか。 僕はまたトン…
穴の中は真っ暗で、何も見えなかった。 僕はしばらくして意識を失って、目が覚めると トンネルの入り口の前で横になっていた。 体を起こして周囲を見回した。 彼はいなかった。 蝉が鳴いていて、体に嫌な汗が滲んでいた。 夕日が沈んでいく。 僕は眺めること…
僕は彼の体を背負って老人の後を追う。 「置いていけ。そいつはもう死んでる。 ここで死ぬってことはあの世に直結してる。 つまりもう助からない。」 「現世に持って帰ってちゃんと供養したいんです。それすら許されないんですか?」 老人は何も言わず先を進…
「彼は死にたかったんじゃありませんよ。」 僕はそう老人に返した。 「まぁ、いい。お前はとにかく寝るな。またさっきみたいになるぞ。」 老人は地面に胡座をかいて座り込む。 彼の肉体はまだ僕の目の前にあって、触れることはできる。 彼の手を握っても、生…
老人は地面に座り込んだ。「お前らのことを教えろ。本当はなぜここに来たんだ?どうせ死にたいとか思っちまったんじゃねえか?」 僕は「あの絵を見たら出れないと言っていましたけど、どういうことなんですか?」 「お前、馬鹿だろ。質問に質問で返すな。」 …
トンネルの出口はまだ見えない。 僕らは無言のまま歩き続ける。 「なぁ、本当に出口あるのかな?」 「入り口があるんだから、出口はあるはずだよ。」 「おかしくないか?このトンネルの存在意義はなんなんだ?何年前に作られたか知らないけど こんなに長くす…
歩きながら、色んなことを話した。 教科、女子、部活のことだった。 僕は「好きな教科は特にないけど、国語の先生が好きなんだよ。ハキハキしていて、スムーズに授業が進む。数学の先生は声が小さくてよく分からないな。他の先生は全員同じようなもんで、た…
側壁の絵が途切れるぐらい歩いた。 まだトンネルの出口はない。 後ろを振り向けば入り口の光も見えなくなっていて、うっかりしたらどっちが行きたい方向なのかも分からなくなる。 「なんかワクワクしてきたよ。」 僕は彼に向かってそう言った。 「僕は出口を…
トンネルに入ってスマホのライトをつける。 向かい風が弱く吹いていた。 地面や側壁や天井を照らしてコンクリートがあった。 「なぁ、普通のトンネルだな。」 「うん。」 「そういえば、夏休みの宿題終わったか? もう8月22日だぜ。」 「まだだよ。」 「何が…