とりとめのないはなし。

2023-08-01から1ヶ月間の記事一覧

吐露11

トンネルをしばらく進んで、側壁にあった絵が無くなっていたことに気づいた。 老人も見つけることは出来なかった。 僕はまたあのコンクリートの壁に出会い、そして入口に戻ることを夕暮れまで続けた。 僕は死にたいと思わなければあのトンネルがあの世に続く…

吐露10

僕はトンネルに向かう途中、彼のことを考えていた。 いじめだとか、夏休みの宿題だとか、僕は肝心な彼についてを何も知っていなかった。 トンネルに着いた僕は、中に石ころを投げ込んでみた。 遠くまで音が響いていた。 本当に出口があるのか。 僕はまたトン…

吐露9

穴の中は真っ暗で、何も見えなかった。 僕はしばらくして意識を失って、目が覚めると トンネルの入り口の前で横になっていた。 体を起こして周囲を見回した。 彼はいなかった。 蝉が鳴いていて、体に嫌な汗が滲んでいた。 夕日が沈んでいく。 僕は眺めること…

吐露8

僕は彼の体を背負って老人の後を追う。 「置いていけ。そいつはもう死んでる。 ここで死ぬってことはあの世に直結してる。 つまりもう助からない。」 「現世に持って帰ってちゃんと供養したいんです。それすら許されないんですか?」 老人は何も言わず先を進…

吐露 7

「彼は死にたかったんじゃありませんよ。」 僕はそう老人に返した。 「まぁ、いい。お前はとにかく寝るな。またさっきみたいになるぞ。」 老人は地面に胡座をかいて座り込む。 彼の肉体はまだ僕の目の前にあって、触れることはできる。 彼の手を握っても、生…

吐露 6

老人は地面に座り込んだ。「お前らのことを教えろ。本当はなぜここに来たんだ?どうせ死にたいとか思っちまったんじゃねえか?」 僕は「あの絵を見たら出れないと言っていましたけど、どういうことなんですか?」 「お前、馬鹿だろ。質問に質問で返すな。」 …

吐露 5

トンネルの出口はまだ見えない。 僕らは無言のまま歩き続ける。 「なぁ、本当に出口あるのかな?」 「入り口があるんだから、出口はあるはずだよ。」 「おかしくないか?このトンネルの存在意義はなんなんだ?何年前に作られたか知らないけど こんなに長くす…

吐露 4

歩きながら、色んなことを話した。 教科、女子、部活のことだった。 僕は「好きな教科は特にないけど、国語の先生が好きなんだよ。ハキハキしていて、スムーズに授業が進む。数学の先生は声が小さくてよく分からないな。他の先生は全員同じようなもんで、た…

吐露 3

側壁の絵が途切れるぐらい歩いた。 まだトンネルの出口はない。 後ろを振り向けば入り口の光も見えなくなっていて、うっかりしたらどっちが行きたい方向なのかも分からなくなる。 「なんかワクワクしてきたよ。」 僕は彼に向かってそう言った。 「僕は出口を…

吐露 2

トンネルに入ってスマホのライトをつける。 向かい風が弱く吹いていた。 地面や側壁や天井を照らしてコンクリートがあった。 「なぁ、普通のトンネルだな。」 「うん。」 「そういえば、夏休みの宿題終わったか? もう8月22日だぜ。」 「まだだよ。」 「何が…