とりとめのないはなし。

長閑

彼女に会えた時に言う言葉を考えながら一週間を過ごしてきた。

シュミレーションをしておかないと僕は何にも話せなくなってしまう。

何にも話せないと彼女に気を遣わせてしまうことになることを避けたいんだ。

僕があんまりにも何も言わないもんだから彼女も一緒になって黙ってしまう。それを見て僕も黙ってしまうんだ。

何か言おうとするけれど言葉が全く浮かばないんだ。

 

彼女と会う当日は朝ばっちり目が覚めて、

洗顔をして、歯を磨いて、シャワーを浴びた。

白のTシャツに紺色のジャケットを着て、黒のスキニーパンツを履いて、ベージュ色の靴を履いた。

彼女と待ち合わせしたのは駅前の喫茶店だった。

よくそこで待ち合わせるんだ。

僕は店に入って店員さんに席を案内してもらった。少し早く着いてしまったから読書をすることにした。お店には本がいくつか置いてあって、好きな本を読めるんだ。

僕は赤と黒の縞模様が装丁してある本を取った。

正直言って彼女と会うのにドキドキしすぎて、

本の中身なんか何一つ入ってこないんだ。

だから本を読むのをやめて、彼女と何を話そうか考えることにした。

「会えて嬉しい、来てくれてありがとう、今日はどこ行こうか?、好きだよ」

どれも顔から火がでるくらい恥ずかしいものだ。僕にとってはね。

僕は緊張していた。

だから、彼女が僕の目の前にいたことに気づかなかったんだ。

僕は彼女の顔を目の前にして、お化けが出たみたいにとってもびっくりしてしまったんだ。

 

 

もちろんその後の話なんかしたくない。

彼女が酷く怒ってお店を出てしまったし、

僕はもう死んだほうがいいと心底思ったんだ。

こうして文を書いて僕は僕を庇いたかったんだろうな。