深く思い出を刻み込んだ彼は前を向いて歩いていった。
彼が一歩ずつ、あるいは半歩ずつ、あるいは4分の一歩ずつ日々を過ごしてきたなかで、堆積していった感情はもはや僕には理解できないものだ。
僕が自転車に乗ってあの公園に行くと、彼は遅いぞ、と言う。
僕が生まれる前に起きたことを僕は知らない。
だから学ぶということが出来る。
僕が死んだ後のことなんて何も分からない。
だから僕は今を生きていられる。
これは僕の記録で彼の軌跡で、彼女の言葉だ。
春を行くあなたへ。
辛いことはあります。
苦しいこともあります。
死にたくなります。
誰かを殺したいほど憎むかもしれません。
生きることが不思議に思うでしょう。
なぜこんな思いをしなければならないのか。
なぜ自分は生きているのか。
なぜどいつもこいつも自分のことを見てくれないのか。
なぜ誰も助けようとしてくれないのか。
なぜ自分は死ななかったのか。
生きているから。生きていることに真面目になって真摯になって、直向きになって、実直になって、虚しくなる。
悲しくなったら僕を見て、
苦しくなったら思い出を見て、
死にたくなったら花と空を見て、
生きようと思えたならあなたの勝ちだ。