貴方と約束した時間ぴったりに僕は到着した。
時計台の真下にベージュのコートを着ている貴方がいた。
「ごめん、待った?」僕が言った。
「ううん、全然。」貴方はそう言う。
ところで、この話を書いている途中に烏が鳴いていた。
僕の部屋にある本棚からは見えない外の景色が額縁に入れられた写真のようだった。
少しだけ僕の話がしたくなった。
話を戻そう。
「あんまり無いよね。二人で出かけるの。」
「うん、ちょっとプレゼントを買いたくてさ。」
「へ〜、誰にあげるの?」
「あげるんじゃなくて、自分に買ってみたくなってさ。」
「自分へのご褒美ってやつ?」
「そんな感じ、かな。」
僕らは会話をしながら歩いていた。
僕が思うに、辛い現状を逃れるために必要なものは夢中になることだと思う。そのための環境を模索して、いくつか試行を繰り返す必要がある。僕が辿り着いた答えが誰のものでも無いことはすでに知っている。
話を戻そう。
「これ、どうかな?」
僕は赤いマフラーを手に取って彼女に聞いた。
「いいんじゃない?」彼女は返す。
「これは?」
僕は紺色の手袋と青色のセーターを手に取った。
「いいんじゃない?」彼女は返す。
「そもそもさぁ、自分のプレゼントを買うために何で私を呼んだの?」
「一人じゃ決まらないんだよ。」
「何で?」
「何が好きとか、何が嫌いとか、自分で自分のことが分からないんだよ。だから、自分以外の人が好きなやつを選びたいんだ。そうすれば、
世間とか、社会から外れないと思うんだ。
卑屈だけどしょうがないんだ。僕は僕のことをよく知らない。だから君から見た僕を僕は知りたいんだ。」
僕はポカーンとしている彼女を見ていた。
僕は無口で難しい人間だと思う。これが自己評価で、数年間変わっていない。
これを書いている人が本当にそう思っているかの判断は貴方に託すしかないが、さまざまな人が世の中にいることも事実だ。
僕があの夕焼けについて思うことを言ったところで、感じ方も表現方法も千差万別。
ただ、固有のものを持っている人が現代社会では多くなっていると思う。
個性的という言葉は苦手だが、思考や行動が個人で確立しつつある。
統率された組織を目にすることは滅多にない経験だと思う。
ただ、組織の中で生きていくことが、一つの正解ではないという事実があるんじゃないかと思う。
僕は疑問をたくさんもっている。
話を戻そう。
「だーかーら、これは似合わないよ。こっちの方がいいって!」
「そう、かな?じゃあ、こっちは?」
「こっちだって!」
彼女のおかげで服や装飾品をいくつか買えたが、彼女のものをまだ買えていなかった。
「君の好きなものを買いに行こう。」
「私はいいわ。なんか今日疲れたし。」
「そっか。じゃあ、いつでも付き合うから連絡してね。」
「うん、ありがと。じゃあ、私帰るね。」
「あっ、うん。ありがとう、今日は。またね。」
背を向けながら彼女は手を振っていた。
最後の話をしばらく書いていたんだ。
おかげでクリスマスも年末も過ぎてしまった。
またぼちぼち更新していきたいね。
僕には書くことしかもう残っていないからね。