とりとめのないはなし。

空が消える

どれだけの悲しみが君を覆っているんだろう。

 

君にかけられた言葉の数々が堆積して出来た

巨大な壁を目の前にしているよ。

 

果てが見えないな。まるで世界を横断しているほど巨大だ。

 

僕は言葉の捉え方を間違え続けてきたんだろうな。

だからもう、どんな言葉もほんの少しの風で吹き飛んでいくんだ。

少しずつ壁に穴をあけようとしている君が僕にはとても勇敢に見えた。

僕はもうその壁を見向きもしない。

ただ、空を眺めているだけだ。

 

君が諦めないことを君は知っていたんだろう。

少しずつ綻びが出来始めた壁を前に君は黙々と言葉を拾い始めた。

 

その一つ一つが空を覆い始めて、空は言葉で覆われた。

僕はそれを眺めている。

壁が崩れ、向こう側の世界では大きな海が広がっている。

 

世界は言葉でつくられているわけではなく、

僕らで出来ていた。

あの丘

青い花が散っていって、彼はドアを開けて外に出た。

彼女は本を読むことをやめた。

僕は音楽を聴いている。

 

あのカーテンの色はパステルカラーで、本のカバーには押し花のデザイン。

誰もいなくなった部屋でパソコンのキーボードを打っていた。

 

彼女は「言葉は愛するために使う。」と言っていた。

彼は「言葉は手段で行動が目的だ。」と言っていた。

 

僕が話をする前に彼らは「君の言いたいことは分かっているよ」と言わんばかりの表情で僕の目を見て話を聞く姿勢になる。

 

僕はそれに少し緊張しながら、

言葉は「僕らだけのためにある。」と言った。

彼らはずっとニヤニヤしていた。

 

 

あの丘には広い草原があって、白や黄色の花がまばらに咲いている。

 

僕はまた文章をパソコンに打つ。

またここには戻る。

結果から言えばここが僕の原点だった。

隙間から話③

音楽を小説を生活の中心に置いておける時間を確保しておくことを目標にしておきながら、僕は文章を書くことができた。

 

誰かのために書ける文章には出会えない。

だが、その試みぐらいは許されていいだろう。

 

貴方のことを愛すよ。

僕は言葉で全てが語れると思っていない。

語れない部分の方が多くを占めている。

 

何にも伝わってこない文章も大好きな文章も

それらについて

僕らのために書かれたんだと思うことも、何を言っているのか分からないと思うことも全て自由自在だった。

 

読み手に寄り添うために何が出来るんだろうね。

 

 

SNSが僕らの生活に登場してから僕らは言葉を使わなくなった。

切り抜かれたもので全て分かった気になる。

過程も人柄も倫理も道徳も規則も何もかも全て捨てて自己の目と脳みそで判断をして、答えを創り出していく。

 

僕らは本当に歴史の重大な一幕に立たされている。

当事者同士で解決すべき問題と、社会的な問題が混同していく時代だ。

僕らの言葉は誰にも届かないと思いたくないけれど思ってしまうような現代だ。

 

悲しみも笑いにして、それが強さとか、弱さとか、分かりやすく伝わりやすい言葉で誰かに伝えようとするんでしょう。

 

僕らが理解し合えるなんて思っていない。

ただ、理解出来たという答えを貴方に対して用いたくない。

人との関係が簡単なわけがないと思っている。

僕らは道半ばで立ち止まって考えたり、ときには走ったり、歩いたりして、思考を積み重ねていく。

 

それを楽しいとか苦しいとか人の感情で語れるようになるまで僕らが生きていられる保証もない。

少し

あの空には雲がかかっていて、僕の目の前には電柱が立っている。

僕は数分前に自転車に乗っていた。

漕ぎ続けた道はなんて事のないただの道だった。

僕は下り坂を降りて行く途中で電柱にぶつかった。

 

深夜の住宅街だ。

何が起きたか分からなかったので、僕はこの世界から弾き出されたような気分を自分で起こした。

そうして僕がこの世界にちゃんといらないと言われたことに安堵をして一人で夜を歩いていける気がした。

 

そんなことはない。

この世界はそんな健気で丁寧で慎重な一面を僕に見せたことはない。

いつだって自己責任を証明してくれたのがこの世界だ。

 

自転車の前カゴは前面が少し凹んでいる。

僕は自転車に乗ってまた道を進んでいく。

 

non 2

こういう時に何を言うべきか、僕は知らない。

だから考え続けます。

 

しばらく旅行に出ているように文を書いていました。

新幹線、飛行機、船に乗るような旅行です。

当たり前の行動っていう言葉が最も抽象的で

あやふやなものです。

今のこの社会のようにです。

何を言っているか分からないことを僕は綴っていきます。

 

ズレた価値観というものから生まれる言葉は共感者がいて意味を成します。

どんな言葉でもそうですが、誰が発するかが最も重要です。

為人やその人の価値観を知っていれば、言葉の理解度も深くなるのでしょう。

 

 

どこの誰が言っているかも分からない言葉が、どこかの誰かに突き刺さることが簡単に起きてしまう世の中だから言葉と向き合う強さを持たなくてはなりません。

僕の価値観と貴方の価値観が同じではないことを証明することはひどく難しい。

逆もまた然りです。

貴方の目を通して得る情報が本当に必要かどうか、貴方が決めなければならない。

 

自己責任や責任転嫁とか個人の立場を考えさせるような環境の中にいるときに言葉をそのまま呑み込んでしまいやすくなります。

 

冷静さや柔軟性が普段の貴方の中にはしっかりあることを思い出して欲しい。

言葉が何のためにあるのか、その答えを探す手がかりが貴方の中にあることを自覚して欲しい。

 

実感や経験という言葉はもっと後で語るべきことです。

過ぎる時間が重いでしょう。

深く暗い海に落ちているような感覚が全身を包むでしょう。

光なんかどこにもないでしょう。

誰の声も聞こえなくなるんでしょう。

 

そういうときに僕は音楽を聴いてきた。

リズムがメロディが心の影を照らすんです。

不思議です。

本当にまるで魔法だ。

触れられない、手応えなんかないのに、自分の身体を包む何かが確かにあるんです。

それは体内や脳まで柔らかくしてくれる。

そこから貴方の目が覚めてくる。

歩を進めようとする。

 

時間なんか気にしなくていい。

あの空を見て欲しい。

その下に僕も貴方も貴方の好きな人も。

 

 

non

貴方と約束した時間ぴったりに僕は到着した。

時計台の真下にベージュのコートを着ている貴方がいた。

「ごめん、待った?」僕が言った。

「ううん、全然。」貴方はそう言う。

 

ところで、この話を書いている途中に烏が鳴いていた。

僕の部屋にある本棚からは見えない外の景色が額縁に入れられた写真のようだった。

少しだけ僕の話がしたくなった。

話を戻そう。

 

「あんまり無いよね。二人で出かけるの。」

「うん、ちょっとプレゼントを買いたくてさ。」

「へ〜、誰にあげるの?」

「あげるんじゃなくて、自分に買ってみたくなってさ。」

「自分へのご褒美ってやつ?」

「そんな感じ、かな。」

僕らは会話をしながら歩いていた。

 

僕が思うに、辛い現状を逃れるために必要なものは夢中になることだと思う。そのための環境を模索して、いくつか試行を繰り返す必要がある。僕が辿り着いた答えが誰のものでも無いことはすでに知っている。

話を戻そう。

 

「これ、どうかな?」

僕は赤いマフラーを手に取って彼女に聞いた。

「いいんじゃない?」彼女は返す。

「これは?」

僕は紺色の手袋と青色のセーターを手に取った。

「いいんじゃない?」彼女は返す。

「そもそもさぁ、自分のプレゼントを買うために何で私を呼んだの?」

「一人じゃ決まらないんだよ。」

「何で?」

「何が好きとか、何が嫌いとか、自分で自分のことが分からないんだよ。だから、自分以外の人が好きなやつを選びたいんだ。そうすれば、

世間とか、社会から外れないと思うんだ。

卑屈だけどしょうがないんだ。僕は僕のことをよく知らない。だから君から見た僕を僕は知りたいんだ。」

僕はポカーンとしている彼女を見ていた。

 

僕は無口で難しい人間だと思う。これが自己評価で、数年間変わっていない。

これを書いている人が本当にそう思っているかの判断は貴方に託すしかないが、さまざまな人が世の中にいることも事実だ。

僕があの夕焼けについて思うことを言ったところで、感じ方も表現方法も千差万別。

ただ、固有のものを持っている人が現代社会では多くなっていると思う。

個性的という言葉は苦手だが、思考や行動が個人で確立しつつある。

統率された組織を目にすることは滅多にない経験だと思う。

ただ、組織の中で生きていくことが、一つの正解ではないという事実があるんじゃないかと思う。

僕は疑問をたくさんもっている。

話を戻そう。

 

 

「だーかーら、これは似合わないよ。こっちの方がいいって!」

「そう、かな?じゃあ、こっちは?」

「こっちだって!」

彼女のおかげで服や装飾品をいくつか買えたが、彼女のものをまだ買えていなかった。

「君の好きなものを買いに行こう。」

「私はいいわ。なんか今日疲れたし。」

「そっか。じゃあ、いつでも付き合うから連絡してね。」

「うん、ありがと。じゃあ、私帰るね。」

「あっ、うん。ありがとう、今日は。またね。」

背を向けながら彼女は手を振っていた。

 

 

 

 

 

 

最後の話をしばらく書いていたんだ。

おかげでクリスマスも年末も過ぎてしまった。

またぼちぼち更新していきたいね。

僕には書くことしかもう残っていないからね。

 

 

この空

僕が思っていたことを君も同じタイミングで話すから僕は言いたかったことをすっかり忘れてしまったんだ。

星が綺麗とか、風が強いとか、そんな様な話にどれだけの価値があったのか、今後の人生なんてものを吹き飛ばせるぐらいの価値だと思っていた。

 

君がドアを開けて、本を読んでいる僕に「いつまで本を読んでいるの?」と投げかけて、僕は本を読むのをやめる、ということが僕らの生活そのものを示していた。

君が僕の中心で僕はその周りを回り続ける衛星だった。

君が映画を見に行こうと言えば僕も見に行くし、水族館に行こうと言えば僕もついていく。

そんな関係性が正しいとか間違いとかはどうでもよくて僕らの答えを毎日の日々の中で模索していただけだった気もする。

僕は君とただ一緒にいられれば良かっただけだった。君はきっと僕一人では見れない世界を見せてくれていたんだ。

 

深夜の公園で僕が好きだと言おうとしたときに、君から「ずっと好きだった」と言われたことを思い出した。

リビングでそんな話を君に話そうとしたら、君も同じ話をして、僕はまた何も言えなくなって君の寂しそうで少し苛立ちを含んだ表情が僕の心を八つ裂きにしていた。

僕は君を抱きしめれば良かったんだと今更後悔している。

 

君はいつも僕より先に行く。

きっと僕も同じ様に言葉で返せば良かったんだろうけれど、それだけじゃ足りないと思ってしまうから愛ってものが何なのかを考えたくなったんだ。

 

君がいなくなってから何も出来なくなった僕を見て。

君はきっと「いつまでそうしてるの?」と言うんだろう。

僕は思い出の輪郭を描くことにしたんだ。

ぼやけていても、薄れていても、確かにそこにあったものを僕は形にしたい。

この空に捧げられるような大層なものじゃないかもしれないけれど僕はそうしなきゃいけないと思う。